奥比叡の里より「棚田日詩」 | 初夏

2014/06/08

白鷺が一羽、初夏の大空を飛んでいく。柿の木の葉っぱの裏側には、小さな白い花が隠れている

初夏

暦の上では初夏である。

雑木林や田んぼの緑も少し濃くなり、伸びてきた稲の上を爽やかな風が吹き抜けていく。春風の中に感じていた肌寒さは消えている。薄手の上着を脱ぎ捨て、曲がりくねった棚田の坂道をゆっくり登って行くと、気持ちのいい汗が背中を濡している。既に陽射しは春ではない。しかしまだ夏でもない。日本にはそんな季節の変わり目がある。こんなところが私の「初夏」のイメージである。

今年は、こうしたイメージに近い「初夏」が、5月の中旬を越したあたりで一週間ほどあった。その後は、いきなり30℃を超す真夏日が続いた。特に、北国であるはずの北海道が、何日か35℃前後の最高気温を記録していた。日本の爽やかな初夏が壊れようとしているのだろうか。