奥比叡の里より「棚田日詩」 | 田植え前

2014/04/20

田植え前

まだ「三寒四温」の中にあるが、暖かな日の日中は25℃を越え、少し汗ばむような日もある。桜の花はあっという間に散ってしまい、葉桜の中にわずかな花を残すだけとなっている。それと入れ替わるように柿の木の新芽が一斉に芽吹き始め、棚田のそこかしこで宝石のように輝いている。棚田を取り囲む雑木林も新緑の時を迎え、ついこの間までの枯れ枝に可愛い若葉を繁らせ始めた。田んぼの畔や土手には野の草花が咲き誇り、目に染みるようなタンポポの黄色が一層春の深まりを感じさせてくれている。棚田の空を白鷺が舞い、多くのカモが溜め池に集まってきている。

この辺りの田植えは、4月末から5月末までの一月ほどを掛けて徐々に行われていく。その最盛期は、ゴールデンウィークの後半から5月中旬に掛けてである。それぞれの田んぼで田植えの時期が異なるため、その準備の農作業(春耕、水路の清掃、土手の野焼き、草刈り、水入れ、畦の補修、苗代づくり、代掻きなど)も田んぼ毎にマチマチである。それでも水を張られた田んぼが少しづつ増え、棚田の細道を多くの軽トラックが行き交うようになってきた。馬蹄形の棚田の隣にある駐車場から田んぼを見下すと、数台のトラクターが小さな田んぼの中をせわしなく行きつ戻りつしている。今年もいよいよ戦闘開始である。