奥比叡の里より「棚田日詩」 | 「いのち」の光

2020/03/08

「いのち」の光

青白い光が田んぼの水溜りの中に浮かんでいた。この光の正体は油膜の反射光である。冬場には少ないが、田植えの頃から秋に掛けての水田ではよく見かける光景でもある。

田んぼ写真を撮り始めた30年ほど前、水田に浮かぶ油膜というものに違和感のようなものを感じていた。思い切って、農作業をしているおじいちゃんに聞いてみたことがある。恐らく当時の私は、草刈り機などからの燃料漏れではないかと思っていたはずだ。ところが答えは意外なものだった。

水田でトンボなどの小さな生きものが死ぬと、その肉体の分解過程で脂肪分が溶け出し、それが油膜となって水面を漂うのだという。何故か「成程!」と思った。

考えてみれば動植物を問わず、油分はほとんどの生命の構成要素となっている。こんな「いのちの光」もそれほど不思議なことではないのかもしれない。

 

だとすれば・・・・

冬の終わり、ここにどんな小さな「いのち」が生きていたのだろうか?