奥比叡の里より「棚田日詩」 | 溜め池

2013/04/14

溜め池

米作りという観点から見ると、奥比叡の里は決して水の豊富な所ではない。比較的温暖で雨量も少ない。山々から流れ出る川、といってもどれもが小川のような川ばかりだが、水量も乏しく、急な勾配を下ってすぐに琵琶湖に流れ込んでしまう。その川も、田んぼよりずっと低い所を流れている。そうした事情もあって、この辺りでは田んぼより少し高い所に溜め池がいくつか作られている。平地の溜池と違って、規模も小さく、多くは土手や林に遮られて、一見しただけではどこにあるのか分からない。ひっそりと隠されたような池たちである。

上の写真は、そんな溜め池の一つである。周りは杉や檜の林に囲まれ、普段は訪れる人の少ない静かな、そして地味な溜め池である。ところがこの桜の季節、にわかに水面が華やぎ始める。この小さな写真では分かりづらいが、青空と満開の桜を映しているだけでなく、はかなげな桜の花びらがさざ波に揺られながら水面を漂って美しい。

 

こんな静かな溜め池にも、問題は起きてくる。数年前から、琵琶湖で釣れた外来魚などを放流する人たちがいる。釣り堀代わりにされているようだ。村の人たちに聞くと、その魚たちが田んぼにまで現れ、田植えされたばかりの稲の根を傷つけてしまうそうだ。この辺りの生態系が壊れていくといった問題もあるのかもしれない。いずれにしてもこの山里の小さな溜め池に、いつまでも静かな時が流れていってくれることを願ってやまない。

 

上の写真は、棚田  滋賀県  仰木  棚田米  里山

① 「一本桜」の下を軽トラックが一台。ようやく冬を越した春の暖かさ、春の華やかさがそこにあった。

②   桜の蕾が、命の愛らしさ伝えてくれていた

③   ソメイヨシノはクローンだが、命を紡ごうとするエネルギーはいかほどのものか?  満開の桜がその精一杯の力強さを教えてくれているように思えた。盛んに行き交う軽トラック。今年の農作業も、いよいよ戦闘開始だ。

④  「一本桜」の花の中に、大地を耕す人がいた。今年の農作業が、稔り多かれと願った。