奥比叡の里より「棚田日詩」 | 放射冷却

2014/11/23

放射冷却

すでに晩秋。風もなく、雲一つない満天の星空。こんな素敵な夜中に限って、地表の熱は急速に奪われ、気温はどんどん下がっていく。放射冷却という気象現象が起りやすくなるからだ。

朝の6時過ぎ、暗闇に包まれた細い農道を注意深く車を走らせる。田んぼを見る時は、真夏でも真冬でも、昼でも夜でもいつも窓を開けて走るのが習慣となっている。この日は、その開け放たれた窓から少し早い冬が一気に入り込んで来た。

快晴の空に太陽が昇り始めた。朝のすがすがしい光が棚田に輝きを与えていく。薄っすらと田んぼが白い。霜が降りて来たのだ。放射冷却によって、いつもとは違う棚田の表情に心が躍る。

今日の写真の主人公は、誰も気に留めないような小さな草むらの雑草たちである。わずか一坪ほどもない草むらにも、地球の息吹と野の草花たちが一緒になって創り出す奇跡のような世界が広がっている。雑草と呼ばれる草花たちの霜に彩られた最後の秋が美しい。