奥比叡の里より「棚田日詩」 | 稲の花

2014/08/03

稲の花

私が稲の開花を確認したのは7月23日の水曜日であった。といっても、まだ一部の田んぼだけで、ほとんどの田んぼで開花は始まっていなかった。ところがその4日後の7月27日(日)になると、反対にほとんどの田んぼで稲穂が姿を現し、その稲穂に薄黄色の小さな花を咲かせていた。この間、気温35℃前後の猛暑日。晴れた日が続いたこともあって、順調に開花が進んだようだ。

開花は、気温30℃を超す晴れた日の空気が乾燥してくる状況の中で行われる。その日の気象条件にもよるが、午前10時から12時頃に多く見られる。先ず、エイと呼ばれる稲穂の殻(モミ殻)が上の方から二つに割れる。その中から6本の雄しべが顔を出す。反対に雌しべはエイの底の方にあり、よほど覗きこまないと見えない。雄しべの花粉を包んでいる葯(ヤク)が乾燥してくると、花粉が落下し、雌しべに付着する。受粉である。受粉をしてしまうと、エイと呼ばれる殻を再び閉じ、役割を果たした雄しべはそのまま外に残され、やがて枯れていく。今日の写真は、受粉後、閉じられたエイ(殻)の外に雄しべ(葯と花糸)が取り残されたところである。一般的には、この雄しべの部分が「稲の花」と呼ばれている。

この後エイの殻の中では、光合成によって得られたブドウ糖をデンプンに変え、雌しべの根元にある子房というところに蓄積していく。稲からすると、これが次の世代の種子となる。私たち人間からすれば、それがお米となる。

稲穂の出現によって、田んぼは心なしか黄色くなってきた。収穫まで、あと一月ほどである。