奥比叡の里より「棚田日詩」 | 2018 | 3月

2018/03/18

霜の中から

3月は、中々気性の激しい月でもある。春一番が、春の嵐となって吹き荒れる時もある。5月のようなポカポカ陽気の日が続くかと思えば、いきなり真冬日に戻ることもある。菜種梅雨などといって、雨の日が続くことも多い。そんな日々を繰り返しながら本格的な春に移行していくのが3月である。

琵琶湖の湖西地区では「比良八講荒れじまい」という言葉がある。「比良八講」とは、比叡山天台宗の僧侶や山伏たちが湖上安全や浄水などの祈願を行う宗教行事である。それは3月9日から26日までの間に執り行われ、最終日にはほら貝を吹き鳴らして街中を練り歩く。この時期、比良山と琵琶湖の気温差が大きくなり、山の上から琵琶湖に向けて冷たい突風が吹き降ろされる。「荒れじまい」とは、比良八講の最終日には突風も収まり、湖国に本格的な春が訪れるという意味である。

 

今日の写真は、3月の中にある冬と春の点景である。上の写真は3月11日、霜に覆われ倒れているホトケノザ。下の写真は10年ほど前の3月26日、「荒れじまい」の日に撮られたものである。花が咲き誇り本格的な春の到来を告げている。奥比叡の春は、凍てつく霜に耐えながらやってくるようだ。

 


 棚田は、田植えに向けて忙しくなっている。水路の整備、春耕、土手の草焼き、等々。出会う軽トラックの数が多くなってきたようだ。土手にはイヌノフグリが青く小さな花をいっぱい咲かせ始めた。蝶も飛び始めている。鳥たちは、枯れ草や枯れ枝をくわえて巣作りに忙しい。今年は開花が早いのか、一本桜の蕾も大きく膨らんでいる。今月の末には咲いているのかも知れない。

棚田に小さな命の目覚めの時がやって来た。