奥比叡の里より「棚田日詩」 | 五穀米

2013/06/02

  かつての米づくりは、雑草との絶え間のない闘いであった。多くの労力と時間が、雑草取りのために費やされてきた。今日では除草剤というものがあり、全国の多くの農家で使われるようになっている。ここ奥比叡の田んぼでも例外ではない。除草剤の登場によって、米づくりの省力化が大きく進められたのは事実である。この写真は、背中に背負った動力によって除草剤を散布しているところである。

  消費者の立場からは、除草剤や農薬などをできるだけ使わないでほしいという要望がある。ここ奥比叡の生産者の多くも、その願いは知っておられるし、安心・安全な米づくりをしたいと思っておられる。それにもかかわらず今、除草剤の使用を直ちに止められないのは、それを止めてしまえば恐らく米づくりそのものを止めざるを得ないからである。ここには、除草剤に代って雑草を取る人手が見当たらない。

五穀米

今年は、冬から春にかけての雪や雨の量が少なかったせいか、溜め池も干上がっているような状態の時がある。そのため、ヒエなどの雑草の多い田んぼが心なしか目立つように思われる。”そのため”と書いたが、これには少し説明がいる。除草剤の効きが悪いのだ。除草剤は田植え前後に使われるが、除草効果を高めるためには水深が3~5㎝ほどの水で田んぼが満たされていなければならない。今年はその水が少なく、田面が露出してしまったりして除草効果が弱くなってしまったそうだ。

「今年のお前とこの田は、雑草(ヒエ)だらけになってるで!」

「そやろ、今年は五穀米を作ってるんや!!」

さすがにここは関西の田んぼ。こんな不幸も笑いに変えてしまう。

* 五穀米は古代から食されており、古事記や日本書紀にも記されている。米・麦・栗・ヒエ・豆などをブレンドしたものである。

 

今日の写真は、「雑草」というもので繋いでみた。上の写真から

①  かつて仰木と伊香立を繋いでいた旧道。現在は谷を埋め立てるダンプの往来が激しく、舗装されているせいもあって道の真ん中には雑草が伸びてこない。夏には、このガードレールが見えなくなるほど雑草が生い茂る。

②  圃場整備された田んぼには、必ず軽トラックが止められるスペースが作られている。ここは昔ながらの田んぼ。そのスペースがない。仕方がないので、田んぼの片隅に板を敷いて急ごしらえの駐車場を作った。雨の降った後には、この板がなければぬかるんだ泥の中に車を止めることとなる。板の細い隙間からも雑草が顔を出す。

③  畔に咲く野の草花(雑草)が愛らしい。棚田  滋賀県  仰木  棚田米  里山

④  田植えに際して稲は、きれいに等間隔で植えられていく。通常除草が成功していれば、稲と稲の間に雑草が生えてくることはない。この写真は、稲と稲の間にびっしりとヒエ(雑草)が生い茂ってきたところである。

⑤  雑草たちに占拠されてしまった農具小屋。人間がいなくなった地球を想像してみると、恐らく東京やニューヨークといった大都会もすぐさまこのようになってしまのだろう。植物(雑草)の生命力は凄まじい。右下の影は、カメラを構える自画像である。

⑥  可愛いネギ坊主の後ろにも雑草が。

⑦  棚田の畔の草(雑草)刈り

 

 

 連続講座 淡海(おうみ)の夢2013 ----------------------

 仰木・棚田写生会

 5月25日(土)成安造形大学附属近江学研究所主催の写生会が仰木の棚田で行われました。この写生会は毎年行われており、老若男女の一般の方々も参加されています。今日の写真は、翌26日のもので、先生と学生さんが昨日の続きを描いておられたようです。

不思議なもので人間は、ある種の風景と出会うと、心の中でその人のすべての人格とその風景とが化学反応を起こしていきます。その反応はやがてイメージという化合物に結晶します。そのイメージが、それぞれの技量を通じてキャンバスの中の絵や写真となって現れてくるのだと思っています。恐らくこの点に関しては、絵画でも写真でも基本的には変わらないのではないでしょうか。

それぞれの化学反応、それぞれのイメージ、それぞれの絵画、だからこそ人間は面白い。そして素晴らしい。そんなことを感じさせてもらった一日でした。快く撮影させていただいた先生方、学生の皆様に心より御礼申し上げます。

こうした取り組みを通じて、田んぼや棚田、里山のファンが一人づつでも増えていきますことを願っております。ありがとうございました。

*大切な作品を、勝手にトリミングしてしまったようになって申し訳ありません。お許しください。

 

 

 成安造形大学附属近江学研究所  (http://omigaku.org/)は、ユニークな近江についての研究活動・教育活動・地域活動を展開されています。ぜひ一度ホームページを覗いてみてください。