奥比叡の里より「棚田日詩」 | 柿の木を見上げると

2012/06/03

柿の木を見上げると

5月初旬の田植えから一月ほどが経つ。風に揺られて頼りなげだった稲も、しっかりと根を張り、強い雨にも風にも負けないくらいの逞しさを備えてきた。柿の木の葉っぱも柔らかな黄緑色から肉厚の濃い緑色に変わってきた。6月初旬の柿の木は、小指の先ほどの白い花もほとんどが散ってしまい、葉っぱの根元あたりに可愛い柿の実の赤ちゃんを育んでいる。自然音痴の私は、奥比叡の里と出会うまで柿の木に花が咲くことを知らなかった。しかも柿の木もいっぱい撮影していたにもかかわらず、3年近くもの間、柿の花に気付くことはなかった。ある日足元を見ると、小さな白い花がいくつか落ちていた。何の花だろう? と見上げてみると、何とそれが柿の花だった。初めて知る事実に心は驚き、高揚した。そのことを自慢したくて友人を柿の木の下に誘ったことがある。その時友人が一言。「ナンヤ、地味な花やなぁ!!」  それは違う。これは「謙虚な花」なのだと、私は今でも思っている。


地味な?柿の花。柿の種類によってか、花数は少ないがもう少し大きな花を咲かせる木もある。