奥比叡の里より「棚田日詩」 | 2020 | 3月

2020/03/29

桜だより

今年の「一本桜」の開花は3月26日の木曜日だったと聞いていた。その時はまだ、無数の蕾の中から数輪の花を見つけるのに苦労したそうだ。

今日29日の日曜日、もう2~3分咲きになっているかと思って「一本桜」を見に行った。残念!まだ数十輪の花を付けているに過ぎなかった。一分咲きにも満たない、0.2~0.3分咲きといったところだろうか。そう言えば週末は冷たい雨に打たれ、東京では雪まで降ったようだ。桜自身、開花のタイミングが難しそうだ。

この時期は例年、棚田の中にある桜の写真を見ていただいてきた。今年も用意をしていたのだが、絵柄が少し地味だったため、急遽上の写真に切り替えた。新型コロナウイルスのために、社会全体が傷付き沈み込んでいる。こんな時だからこそ、少し明るく華やかな桜にしてみた。

春の始まりをお伝えできればと思います。そして誰もが、季節の移り変わりを楽しめる日が一日も早く来ることを願っています。

2020/03/08

「いのち」の光

青白い光が田んぼの水溜りの中に浮かんでいた。この光の正体は油膜の反射光である。冬場には少ないが、田植えの頃から秋に掛けての水田ではよく見かける光景でもある。

田んぼ写真を撮り始めた30年ほど前、水田に浮かぶ油膜というものに違和感のようなものを感じていた。思い切って、農作業をしているおじいちゃんに聞いてみたことがある。恐らく当時の私は、草刈り機などからの燃料漏れではないかと思っていたはずだ。ところが答えは意外なものだった。

水田でトンボなどの小さな生きものが死ぬと、その肉体の分解過程で脂肪分が溶け出し、それが油膜となって水面を漂うのだという。何故か「成程!」と思った。

考えてみれば動植物を問わず、油分はほとんどの生命の構成要素となっている。こんな「いのちの光」もそれほど不思議なことではないのかもしれない。

 

だとすれば・・・・

冬の終わり、ここにどんな小さな「いのち」が生きていたのだろうか?