奥比叡の里より「棚田日詩」 | 林道点景

2013/02/20

林道点景

奥比叡の山々は、中腹より上はほとんどが檜や杉などの針葉樹林となっている。かつての自給自足的な経済の下では、村の人々の家の建築には無くてはならないものだった。一軒の農家を建てるのに、檜や杉の木が80~120本ほどいるそうだ。500世帯もあれば、それなりの木材を必要とした。1965年辺りまでは、電信柱としても盛んに使われていた。最近の農家の新築を見れば、プレハブのモダンな家が目立つ。電信柱もほとんどがコンクリート製に替った。需要の側の劇的な変化は、この辺りの産業としての林業の危機を深めた。加えて農業の危機、労働力の高齢化は、村の林業の高齢化でもあった。山の維持と再生が国の支援なしには難しくなっている。

最近、仰木の桜公園の上にある針葉樹林の中に新しい林道が作られている。伐採と搬出用の道である。多くの木が伐り出されている。単に間引かれているだけかもしれないが、もし何らかの需要が生み出されているとしたら、やはり嬉しい変化だといわなければならない。

 

ここは、仰木より少し北にある村。この林道を訪れるのは、丁度一年ぶりくらいになるだろうか。まだ数日前に降った根雪が残り、時折激しい風と共に雪が舞っていた。棚田のある村から真っ直ぐの道を山の方へ登っていくと、しばらくはクヌギを中心とした雑木林が続く。更に登り続けると、今度は一面の杉林となる。麓から棚田・雑木林・杉の針葉樹林とはっきりと区切られていて、その風景の違いが一目瞭然に分かりやすい所である。

今日の写真は、山の中腹に広がる針葉樹の林から、麓に近い雑木林まで徐々に降りてきた撮り下しの風景である。滋賀県  仰木  棚田  棚田米  里山