奥比叡の里より「棚田日詩」 | 暑中御見舞/朝もや

2014/07/20

暑中御見舞/朝もや

朝の4時半。玄関を出ると、夏とは思えない冷ややかな空気が身体を包んだ。一瞬、寝ぼけた脳が春?秋?と季節を疑うほどだった。それでも夏のこんな日には、朝靄(あさもや)が棚田を覆っていることが多く、写真的には好運でもある。靄(もや)を写すにはどこに行けばいいのか?そんなことを考えながら車を急がせた。

この季節、昼の棚田の空気は田んぼから放出される水蒸気をいっぱい吸い込んでいる。その空気中に含まれる水蒸気(気体)が夜の内に冷やされ、飽和した水蒸気が微小な水滴(液体)となって空気中を漂い始める。これがこの時期、この辺りの朝もやである。

5時。空は白い雲に覆われていたが、案の定、棚田の谷間には朝もやが流れていた。雲が厚く、太陽は日の出の時刻になっても顔を出さない。日の出の写真は諦めて別のカットを撮っていると、突然太陽が雲を透かして姿を現し始めた。瞬く間に空が朱色(あか)く染まる。そして、朝もやに覆われた棚田全体がオレンジ色の光に包まれていく。無中になってこうした光景を撮っていると、朝もやの向こうに一台の軽トラックが現れた。今日も朝の一仕事が、日の出と共に始まるようだ。

これからお盆に向けて暑さが増していくものと思います。今日は、夏の朝の少しヒンヤリとした空気に包まれた風景を贈ります。皆様、くれぐれも御身体、ご自愛ください。