奥比叡の里より「棚田日詩」 | DIARY

2024/01/01

あけましておめでとうございます

この白菜とネギは、日本の鍋料理に使われる野菜の代表格です。今日は料理の中の白菜とネギではなく、雪上に凛として顔を出す野菜たちの造形美をお楽しみください。

まだ術後ということもあって、じっくりと机に座って文章を考えるという状態にはありません。今年の新年のご挨拶はこの辺りにてご容赦いただきます。

今年もまた、皆さまのご多幸とご健康をお祈り申し上げます。

2023/12/31

変わりゆく里山

今日の写真は、冬枯の田んぼに輝く柿の木である。これまでならのんびりと棚田を散策し、何の用心もなしにこうした撮影を楽しんでいた。昨今の熊の出没情報は、殊にこうした柿の実の撮影に当たってはどうしても緊張を強いられるようになってくる。ここ奥比叡の里でも、いつの頃からかシカやイノシシ、熊の獣害が当たり前の里山になってきた。近い将来、そうした問題は克服されるのだろうか?  そう思うと心は少し暗くなる。

今年一年も「棚田日詩」にお付き合いいただき、感謝の言葉もありません。来る新年は、平和な一年となることを願わずにはおれません。皆さまのご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

 

術後の経過も順調で、退院してから20日ほど経ちました。とはいえ、階段の昇り降りは少し怪しく、棚田を自由に歩くというにはほど遠いといったところです。リハビリに勤しんで、一日も早く田んぼの撮影を楽しみたいと思っています。

 

2023/11/21

熊出没。ご用心!!

上の写真は、2021年のお正月に掲載したものである。仰木の棚田から遠く望んだ比良山系が写っている。これまでこの比良山系には熊が生息しているが、手前の棚田が広がる仰木や伊香立の村々と山々(奥比叡連山)には熊がいないと言われていた。下の写真は、今年2月の雪に残された「熊」の足跡である。場所は上の写真にある棚田を左の方に4㎞ほど登って行った林道(奥比叡連山)の中である。標高は400~500ⅿ 程だろうか。

初めてこの足跡を見た時、何の足跡かしばし考えた。どう見てもこの辺りに生息するイノシシ・シカ・キツネ・タヌキ・サル・野ウサギ・人間?などの足跡ではない。かと言ってこの辺りには熊がいないと信じていただけに〝熊”という答えにたどりつくのに少し時間が掛かった。しかもこの大雪の中、熊は冬眠しているはずであるという先入観も邪魔をした。見ればそこかしこに足跡があるではないか! 急に怖くなってスマホの音楽を大音量で流しながら林道を駆け下りた。

 

最近のニュースでは、熊の生息域の拡大が心配されている。今年被害に遭われた方々も180人を超えている。その中には亡くなられた方もおられる。この足跡から仰木・伊香立の人里まで数㎞しかない。熊被害は他人事ではなくなってきた。

本当にご用心! ご用心!! もう一度ご用心!!!

10月初旬から腰痛(椎間板ヘルニア)で、ほぼ寝たきりの状態が続いてきた。いよいよ明日、手術である。熊は怖いけれど田んぼが恋しい!

 

2023/10/15

御免!

昨年の手術箇所とは違った場所で椎間板ヘルニアを発症。立つも座るもできず、寝たきり状態。写真のみで御免!  今日は今頃の棚田の秋です。

2023/09/20

新米できたよ!

今年も生産者の西村さんから嬉しい新米(ミルキークィーン)をいただいた。

日が沈むのも早いもので、6時を過ぎると辺りは少し暗くなってくる。残暑の中にも初秋の気配が感じられる今日この頃である。

夕方の5時になると、わが家の炊飯器のスィッチが入る。やがて炊飯器の湯気の中からお米の香りが立ち昇ってくる。日本人の誰もが知っている、懐かしくも心休まる香りである。

熱湯の対流と水蒸気の圧力によってお米は柔らかくほぐされ、しばらく蒸されてやがてご飯になる。炊飯器のふたを開けると、熱い湯気が例の香りとともに顔を包み込んでくる。真珠のように輝く一粒々々のお米をしゃもじですくい、茶碗に移す。そして口に含み、ゆっくりと噛んでみる。懐かしい甘さが口の中に広がる。例年通りの仰木のお米を実感する。今日も、採れたての新米をいただくわが家の夕食である。



新米! 奥比叡 仰木棚田米

皆さま、ぜひ食べてみて下さい!!

 



「奥比叡の里」。ここはお米の生産現場であり、農業という経済活動が営まれている空間です。「昔ながらの棚田」の景観や「里山環境」がどんなに素晴らしくても、先ずはお米が再生産できる価格で売れなければ、あるいは買っていただくことができなければ、この環境を守り、維持していくことはできません。

私は都会で生活する一人でも多くの人々に、この地の美味しい棚田米を知っていただきたいと思っています。ぜひ一度、食べていただきたいと思っています。但しここでの「仰木棚田米」の応援は、私の勝手な行為であり、お米の売買には一切タッチしていません。

「昔ながらの棚田」で育てられるお米の量は少なく、限られたものです。もし申し込まれたとしても、在庫がなくなり、農家からお断りされるかもしれません。何卒、ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

2023/08/23

今森光彦「里山 水の匂いのするところ」

この写真の前で、暫し佇んだ。琵琶湖の近くで生活している私にとって、琵琶湖特有の「水の匂い」が懐かしく蘇えってきた。それは山奥の清流の匂いではない。この匂いは、夥しい数の生命を育んできた水、それ自身が生命であった水、太古から人々の暮らしと共にあった水、そんな水から醸し出される匂いのような気がしている。

 

朝の漁を終えた船が帰港しているのだろうか。静寂の中、靄はゆっくりと流れ、水面に掉さす音が聞こえている。かすかに船は軋み、時折鳥の鳴き声が聞こえてくる。これは自然を畏れ、敬い、自然に感謝する、そんな人々と自然が作り上げてきた風景である。200年前、300年前のこの地にも同じような人々の営みがあり、同じような朝の一時が流れていたのだろうと思う。そして100年後、人々はここでどんな風景、どんな時間を紡ぎ出しているのだろうか?

 

原画(プリント)でしか味わえない色調や空気感があります。残念なことにそれらは、パソコンやスマホの中では感じることのできない世界です。ぜひ、美術館で今森光彦さんの「里山」を感じてください。そしてぜひ、私たちの生活の身近にある「里山」に足をお運びください。

2023/08/16

残暑御見舞

暦の上では晩夏。とはいえ棚田を歩いていると、頭のテッペンが焼けるように暑い。写真を撮るという行為の中から、判断力や集中力、撮影意欲というものまでが徐々に奪われていく。それでも棚田を見渡せば、数人の方が農作業をされていた。「お疲れ様! お気を付けて!!」という言葉しか思い浮かばない。

 

テレビでは「殺人的」という表現で今年の暑さが語られている。国連によれば、既に温暖化という段階を越えて「沸騰化」の時代に突入したらしい。

いずれにしても恐ろしい時代。皆さまくれぐれも御身大切に!!

2023/07/23

暑中御見舞

日本列島、大方の地方で梅雨は明けたようだ。これまでも充分暑すぎたが、これからが夏の本番だと考えると少しウンザリしてくる。気温は35℃を越している。できるだけ日陰を選んで棚田の中を歩くようにしている。それでも、1時間以上も撮影していると頭がクラクラしてくる。年の重なりと共に夏が厳しく、危険になってくるようだ。

私も気を付けますが、皆さま、くれぐれも御身大切に!!

2023/07/09

今森光彦「里山 水の匂いのするところ」

この写真の前で、暫し佇んだ。琵琶湖の近くで生活している私にとって、琵琶湖特有の「水の匂い」が懐かしく蘇えってきた。それは山奥の清流の匂いではない。この匂いは、夥しい数の生命を育んできた水、それ自身が生命であった水、太古から人々の暮らしと共にあった水、そんな水から醸し出される匂いのような気がしている。

 

朝の漁を終えた船が帰港しているのだろうか。静寂の中、靄はゆっくりと流れ、水面に掉さす音が聞こえている。かすかに船は軋み、時折鳥の鳴き声が聞こえてくる。これは自然を畏れ、敬い、自然に感謝する、そんな人々と自然が作り上げてきた風景である。200年前、300年前のこの地にも同じような人々の営みがあり、同じような朝の一時が流れていたのだろうと思う。そして100年後、人々はここでどんな風景、どんな時間を紡ぎ出しているのだろうか?

 

原画(プリント)でしか味わえない色調や空気感があります。残念なことにそれらは、パソコンやスマホの中では感じることのできない世界です。ぜひ、美術館で今森光彦さんの「里山」を感じてください。そしてぜひ、私たちの生活の身近にある「里山」に足をお運びください。

2023/06/28

麦秋の季節

この一年、早かったようにも思う。途方もなく長い時が過ぎたようにも思う。一年前の4月、ウクライナの国旗の黄色は麦畑の麦秋の色だと書いた。ここ奥比叡の里では、再び麦を収穫する麦秋の季節が巡ってきた。

塹壕が掘られたウクライナの前線の農場に麦の姿はない。一日も早く外国の軍隊がいなくなり、農夫の笑い声が響く農場に戻ってもらいたいものである。

ウクライナ戦争の影響があるのか分からないが、ここ仰木や伊香立の村では、心なしか麦畑が増えているように思う。

2023/05/17

何かがおかしい

「今年は異常だとしか思えない」それが畦でお会いした西村さんの一声だった。

田植えするまでの育苗が何故かうまくいかず、大量の苗を捨てることになったそうだ。この辺りの玉ねぎはどこも小さなままで、大きく育たなかったという。春になると発生してくる小さな昆虫なども、今年は目立って少なくなっているようだ。「何かがおかしい!」とのこと・・・

今日は晴天。久しぶりに田んぼに出てみた。田植えされたばかりの田んぼは青空を写し込み、この写真のように美しい。棚田のどこを見渡しても、「異常」さは見当たらない。

そんな時「まだ5月だというのに、岐阜県の揖斐では35℃を越えた」とのニュースがTVで流れていたのを思い出した。

2023/04/19

遅ればせながら、桜

これまで桜の季節になると、必ずその写真をupしてきました。ところが今年は体調を崩し、桜を見ることができませんでした。ということで、遅ればせながら桜の写真を一枚。私自身のために、そして私と同じように桜を見れなかった人々のために・・・    この写真は数年前のものですが、やはり心が華やぎます。

下の写真は、田植え準備真っ只中といった棚田。早い田んぼでは連休前に、大抵はゴールデンウィークが明けてから田植えが始まります。水入れ・畦塗り・代掻き、いよいよ戦闘開始です。

2023/03/22

水が来た

奥比叡の辺りは、比較的温暖で雨が少ない。また琵琶湖に注ぎ込む川も細く水量も少ない。必ずしも米作りに必要な水に恵まれているとは言い難い。そんなことで、要所要所にため池が作られている。そのため池の水は棚田の外縁や農道の側溝に張り巡らされた幹線水路を伝って田んぼに注ぎ込まれる。ここで外縁に張り巡らされと綺麗に言っているが、大抵は棚田と山との境目、時には足を踏み入れたくないような鬱蒼とした山の中を通されていることもある。現代では、水を谷底の川からポンプで吸い上げ、田んぼに注ぎ込んでいるという所もある。田植えの準備が始まると、ポンプで吸い上げられた水が地下に張り巡らされた水路の中をゴーゴーと音を立てて流れている。

上の写真は、棚田に水が注ぎこまれ、溢れ出しているところ。という単純なものである。しかしこの単純な風景が成立するには、まず山を切り開いて田んぼが作られていなければならない。同時にため池や水路も作られていなければならない。そしてため池や水路は、村の人たちの総力で維持管理されていなければならない。ため池や水路は、降り積もった落ち葉や枯れ枝ですぐに詰まってしまうからである。時には土砂崩れで使えなくなることもある。

この単純な風景の中にも、村の人たちの世代を重ねたご苦労と汗が流れている

下の写真は、棚田の中の満開の梅。今の季節を添えてみた。。

2023/02/18

恵みの雪

2月の棚田は、まだモノトーンの世界。淡雪が枯れ草の色彩を覆い、一層白黒の世界に変換してくれている。そうした中、数本の針葉樹の左横、青緑色した倉庫のような建物が見える。そこだけが鮮やかな色彩を帯びた不思議な風景であった。

今年は1月に大雪が降った。といっても雪国ではないので、深く積もった所でも20~40㎝程度のことである。その後、2月に入っても雪の降る日があり、棚田は白く飾られることが多かった。そんな時、昔聞いたおじいちゃんの言葉を思い出した。「裏山が真っ白になると、その年の米は美味しいんや」というものだった。今年の秋が楽しみである。