奥比叡の里より「棚田日詩」 | 2014 | 6月

2014/06/22

ホタル

今、夜の9時半。田んぼから帰ってきた。毎年6~7月は、夕飯を済ませた8時頃から田んぼに出ることが多くなる。ホタルに会いに行くからだ。20年ほど前、まだ幼かった息子にホタルを見せてやりたいと思ったのが始まりだった。

 

 日本人がホタルを思い浮かべる時、その代表格であるゲンジボタルをイメージしているのではないだろうか。体長は1.5㎝ほどあり、日本では最も大型のホタルである。河川の比較的流れの速いところを好んで生息しているようだが、この辺りではあまりお目に掛かれない。私が毎年会いに行くホタルは、田んぼなどの止水域を棲家とするヘイケボタルの方である。体長は、ゲンジボタルの半分くらいしかない。今日は、生息域の異なるヘイケボタルとゲンジボタルが同時に見られるポイントへも行ってみたが、時期を逸してしまったのか、ヘイケボタルしか飛んでいなかった。これまでの経験からすると、5月の下旬辺りから6月中旬辺りに掛けて光っているのがゲンジボタル。6月中旬辺りから光りはじめるのがヘイケボタルのような気がする。

稲は盛んに分蘖(ぶんげつ)を繰り返し、田んぼの水面を覆い隠すほど成長してきている。ヘイケボタルは、その稲の中から湧き上がってくるように、一匹また一匹と光の明滅を繰り返しながら飛んでいく。この飛んでいる方がオスで、稲や草むらの中で動かずに光の明滅を繰り返しているのがメスである。ヘイケボタルの密集度は低く、ほとんど単独飛行のように飛んでいるのだが、今日は目の前の棚田で、恐らく100匹を超す光の明滅、光の飛翔を見させてもらった。飛ぶというよりも、浮遊しているかのように見えるホタルの光跡は、何かの魂を宿しているかのように思えてくる。20分ほど時を忘れて見とれていただろうか。ホタルの優しくも儚い光が、日常の騒がしい心を芯から癒してくれている。不思議な、不思議な光である。

(追記) 私には、ホタルを撮る技術がありません。というよりも、ホタルにカメラを向けようと思ったことがないのです。写真を撮るより、静かに見ていたいと思う気持ちの方が強いようです。そんな訳で、ホタルの写真は当面ご勘弁ください!?

 


気象庁によれば、関西地区の梅雨入りは6月4日、梅雨明けは7月21日頃の予定だという。ただこれまでのところ、温度も湿度もそれほど上がらない曇り日が続いていている。そのせいか、人間にとっては過ごしやすい梅雨となっている。とはいえ、これはこの地域だけのことで、太平洋岸や九州では大雨の被害も出ている。

雨の日の多い、高温多湿の梅雨はこれからなのかもしれない。いずれにしてもこれからの一ヶ月、どんな梅雨が待っているのだろうか。お米の生育にも大きな影響を与えるだけに、気になるところである。今日の写真は、梅雨のさなかの仰木の棚田である。

2014/06/11

田植えを終えたばかりの田んぼで、さっそくイトトンボの夫婦が産卵行動を始めていた。時折カエルの鼻先と眼玉だけが泥水の中から現れ、ギョロリと獲物を狙っている。田んぼの小さな生きものたちは、いつも命懸けだ。ところでイトトンボとカエルの眼玉、何処にいるのかお分かりでしょうか?

続きを書きました

今年の1月12日の「一度見よ、しからずんば・・・・」文章が中途半端で終わっていました。全文見直して、ようやく書けました。そこで、奥比叡の棚田を25年間撮り続けてきた理由の一つを書いてみました。


このホームページの【TOP】(http://tanada-diary.com/)にある馬蹄形の棚田。その一番下段の田んぼで、田植え(6月6日)が行われました。例年この田んぼでは酒米(仰木日本酒)が育てられているため、6月に入ってからの田植えとなっています。

夜、田んぼに行くと、はかなげなホタルの光が川面の上を飛んでいました。

2014/06/08

白鷺が一羽、初夏の大空を飛んでいく。柿の木の葉っぱの裏側には、小さな白い花が隠れている

初夏

暦の上では初夏である。

雑木林や田んぼの緑も少し濃くなり、伸びてきた稲の上を爽やかな風が吹き抜けていく。春風の中に感じていた肌寒さは消えている。薄手の上着を脱ぎ捨て、曲がりくねった棚田の坂道をゆっくり登って行くと、気持ちのいい汗が背中を濡している。既に陽射しは春ではない。しかしまだ夏でもない。日本にはそんな季節の変わり目がある。こんなところが私の「初夏」のイメージである。

今年は、こうしたイメージに近い「初夏」が、5月の中旬を越したあたりで一週間ほどあった。その後は、いきなり30℃を超す真夏日が続いた。特に、北国であるはずの北海道が、何日か35℃前後の最高気温を記録していた。日本の爽やかな初夏が壊れようとしているのだろうか。