奥比叡の里より「棚田日詩」 | 祈り

2012/06/10

祈り

この辺りでは、毎年今頃が気象庁による梅雨入りだ。梅雨といえば、ジメジメ・ベトベト、カビや食中毒を思い起こさせる不快な季節の代表格だ。しかし、米作りにとっては欠かせない季節でもある。雨の少ない「カラ梅雨」は、人にとっては過ごしやすいが、お米にとっては大敵である。今年の梅雨は、どうなるのだろうか? 

この写真は、伊香立の生津の里を見下ろすかたちで撮影したものである。花の手前にある十個ほどの花崗岩の塊はお地蔵さんである。元々ここにあったものではない。圃場整備が進むとこうしたお地蔵さんが、そこかしこで掘り出されるようだ。この辺りのどの村もそうなのだが、突然現れたお地蔵さんを決して粗末に扱うことはない。必ず一か所に集められ、再び祈りの対象として大切にされる。正直、私個人を振り返ってみれば、宗教的なものとは最も縁遠いところで生活してきたように思う。それでもお地蔵さんたちに込められた村人たちの願いや祈りは痛いほど分かるような気がする。このお地蔵さんたちは、村を見守るかのような場所に置かれている。そのことだけを見ても、村の人たちとお地蔵さんが心の奥底でいかに深く結び付いているのかが分かる。人間的。極めて素朴ではあるが人間的な風景だと思った。