奥比叡の里より「棚田日詩」 | 畝と雪と光と影と

2013/01/13

畝と雪と光と影と

今週は、雪の降り積もった田んぼの畝の造形美です。これも美しい農村風景の一つの断片です。何か特殊なテクニックを使って撮影しているわけではありません。棚田に落ちた光と影をストレートに撮っているだけです。雪が青く写るのは、日陰にある雪が青空を反射しているからです。

私は京都の中心街で育ったため、農村との直接的な関わりは薄かったと言わなければなりません。そのせいか、多くの日本人が共有する「農村(ふるさと)に対する郷愁」といった感情が薄いように思われます。そうした感情で、カメラを向けるということもほとんどありませんでした。恐らく、外国の人が奥比叡の農村を初めて見た時に感じる感動に近いようにも思います。私の写真は、都会で育った人間の目から見た農村風景です。どちらかというと、演歌ではなく、POPな感覚で農村風景を見て来たようです。

 

雪の降り積もった日の棚田は、さすがに人影は少ない。静かな時が田んぼの上を流れていく。都会で働いていると、何とも贅沢な至福の時である。一番上の写真は、雪の上に顔を出す稲のヒツジと小さな凹凸が可愛らしかった。二枚目・三枚目は、畝の一部分だけに光が当たっていた。四枚目は畝に雑木の影が落ちているところである。

私の写真は、いつ・どこどこで撮ったという記録性・具体性は薄い。少し山里の農村であるのなら、どこででも撮れるような写真である。今回の写真もその中の一つである。一枚一枚を個別に見れば、何を撮っているのかすら分からない。「こんな田んぼの美しさもありますよ」ということを知っていただきたくて、あえて抽象的な写真を提案してみることにした。こうした写真がどのように受け止められるのか? 少し心配だが、楽しみでもある。滋賀県  仰木  棚田  棚田米  里山