奥比叡の里より「棚田日詩」 | 案山子

2017/09/03

案山子

♪山田の中の一本足のかかし / 天氣の良いのに蓑傘(みのかさ)着けて・・・

童謡「案山子」は、私の小学校時代の懐かしい思い出とともに今も心の中に残っている。

もっとも今の案山子は、蓑傘などは着けておらず、大抵はオシャレなTシャツと麦藁帽である。中には「安全第一」と書かれた工事用のヘルメットを被っているものもある。

 

 「案山子」(作詞:武笠三)の歌詞にこんな一節がある。

♪弓矢で威(おど)して 力んで居れど / 山では烏が かあかと笑ふ ・・・

この歌が初めて尋常小学校の唱歌として取り上げられたのは明治44年。とすれば、案山子の効能(鳥や害獣を脅して作物を守る)に対しては、当時から大きな疑問符が投げかけられていたことになる。それにもかかわらず100年以上経た今日でも、棚田には人を模した案山子がポツポツと立てられている。案山子の効力については、プロのお百姓さんなら知らないはずはないのだが・・・

古の案山子は、神の霊が宿るものとしてあったようだ。現代の案山子にも、そんな信仰の心が流れているのだろうか?  それとも現代人のどんな心がそれを作らせているのだろうか?

いずれにしても、人の願いや祈りや思いを宿した案山子。しかも人を模した形をしているだけにどこかユーモラスで、辺りの風景を温かくしてくれているように思える。ガンバレ案山子!

 


 

この季節の棚田は、稲穂の黄色と土手の緑が階段のように積み重なって、見事な美しさを描き出している。しかしその風景は、稲刈りが終るまでのわずかな期間しか見ることができない。既に2~3割程度の田んぼで稲刈りが終っている。更にこれからの2~3週間の間にほとんどの稲穂が刈り取られ、棚田から黄色が消えていく。そして、本格的な秋がやって来る。

ところで、この辺りの今年の収量は平年並みだと言われていた。しかし予想に反して、例年よりも2割程度少なくなりそうである。東北地方の日照不足は深刻なようだが、この辺りでも日照が足りなかったのかも知れない。農業というものを見ていると、今更ながらに人は自然の客体だということを身近に感じさせられる。


 

今日の写真は、今から20年ほど前、安物のスキャナーでパソコンに取り込んだものです。設定が間違っていたのか、マゼンタが強く掛かった変な色、しかもかなり暗い画像として出力されていました。レタッチで修整する自信がなかったので、長い間手を付けずにいたものです。ただ昨年の冬からレタッチの教室に通っていることもあって、習ったことを使って何とかしてみようと思い立ったのが吉日。試行錯誤・四苦八苦。ようやく上の写真に辿り着きました。まだまだ不満な点はありますが、少しは勉強の成果もあったように思います。いかがでしょうか??(不安!)