奥比叡の里より「棚田日詩」 | 2023 | 3月

2023/03/22

水が来た

奥比叡の辺りは、比較的温暖で雨が少ない。また琵琶湖に注ぎ込む川も細く水量も少ない。必ずしも米作りに必要な水に恵まれているとは言い難い。そんなことで、要所要所にため池が作られている。そのため池の水は棚田の外縁や農道の側溝に張り巡らされた幹線水路を伝って田んぼに注ぎ込まれる。ここで外縁に張り巡らされと綺麗に言っているが、大抵は棚田と山との境目、時には足を踏み入れたくないような鬱蒼とした山の中を通されていることもある。現代では、水を谷底の川からポンプで吸い上げ、田んぼに注ぎ込んでいるという所もある。田植えの準備が始まると、ポンプで吸い上げられた水が地下に張り巡らされた水路の中をゴーゴーと音を立てて流れている。

上の写真は、棚田に水が注ぎこまれ、溢れ出しているところ。という単純なものである。しかしこの単純な風景が成立するには、まず山を切り開いて田んぼが作られていなければならない。同時にため池や水路も作られていなければならない。そしてため池や水路は、村の人たちの総力で維持管理されていなければならない。ため池や水路は、降り積もった落ち葉や枯れ枝ですぐに詰まってしまうからである。時には土砂崩れで使えなくなることもある。

この単純な風景の中にも、村の人たちの世代を重ねたご苦労と汗が流れている

下の写真は、棚田の中の満開の梅。今の季節を添えてみた。。