奥比叡の里より「棚田日詩」 | 土用干し

2013/07/14

土用干し

関西では、先週の月曜日に梅雨明け宣言が出された。その後、金曜日までは猛暑日が続き、熱中症が続出していた。土日は一雨来て、気温も25度前後まで下がり、本当に一息つかせてもらったという感じである。いずれにしても今年は、梅雨入り梅雨明け共に例年より早く、気象庁泣かせだったようだ。

水曜日の夕方棚田に出てみると、目に染み入るような緑が輝いていた。時折谷を吹き抜けていく風に、波打つ稲が美しかった。

先々週あたりから、多くの田んぼで土用干しが行われるようになってきた。田んぼの水を抜き、土を空気に触れさせ乾燥していく作業である。乾燥というよりは、“干す”といった方がぴったりくる。この作業には、① 根腐れを防ぎ、根を深く強く張らせ、稲を倒れにくくする。 ② 土中の有害ガス(硫化水素、メタンガスなど)を抜く。 ③ 肥料分であるチッソの吸収を抑え、過剰分げつを抑制する。 ④ 土を干して固くし、秋の収穫などの作業性を高める。等々といった目的がある。

土用干し(中干し)は、全国の田んぼで行われる作業である。ただこの作業にも、棚田特有の難しさがあるようだ。もう少し乾燥させた方がいいと思っても、ここではそれができないらしい。余り乾燥させ過ぎて大きなひび割れを作ってしまうと、そこから水漏れを起こし、今度は棚田の土手を崩落させてしまうことがあるそうだ。どれほど乾燥させるのかは、田んぼ一枚一枚で環境や条件も異なり、農家の腕の見せ所でもあるようだ。