奥比叡の里より「棚田日詩」 | 獣の眼

2021/03/24

獣の眼

この小さな写真では分かりにくいが、画面中央よりやや右手に薄桃色をした塊が見える。これは棚田の中にある小さな桜の木が開花したところである。この絵は、竹や杉や檜が混在している雑木林の中から棚田を覗き込んだものである。手入れの行き届かない林は、昼間でもうっそうとして暗い。ひょっとしてイノシシやシカやタヌキやキツネなどの獣たちは、昼間はこのような雑木林などに潜み、外の世界を伺っているのかも知れない。私も獣の眼になって、息を潜めて静かにシャッターを切った。


 今森光彦さんの写真集やNHKのドキュメンタリーで有名になった「棚田の一本桜」は、今日現在2~3分咲きといったところ。天気にもよるが、今週の土・日あたりが最高の見頃かもしれない。この30年間「一本桜」を見続けてきたが、今年の開花は最も早いように思われる。温暖化というフレーズが頭の片隅にあるせいか、桜の開花を素直に喜べない何かがある。

今年はコロナ禍の花見。皆さま、ご用心!ご用心!