奥比叡の里より「棚田日詩」 | 松本さんの野菜畑

2013/04/21

下(しも)の方から、水の入った田んぼが徐々に多くなってきた。代掻きや水漏れを防ぐ畦の補修など、田植えに向けた準備が着々と進められている。ただ溜め池を見ると、水が少なく、干からびた土手が剥き出しになっている。この溜め池は、大倉川からポンプで水を吸い上げているのだが、今年はその川そのものの水量が少ないらしい。連休前後から本格的な田植え。水を一番必要とする時期に、この水の量で大丈夫なのだろうか?

松本さんの野菜畑

今日の写真は、松本さんの野菜畑とその周辺の棚田風景である。

奥比叡の里は、基本的には水田の里である。畑は、規模も小さく数も少ない。ほとんどが、家族で食べられる分かご近所に配られる分しか作っておられない。ただ最近は、奥比叡の里でも労働力の高齢化といった問題があり、レンタルの野菜畑が増えてきた。その多くが圃場整備の終わった四角い田んぼの中に作られている。

松本さんも農地を借りて野菜作りに励んでおられるお一人である。松本さんの野菜作りは、既に10年以上のキャリアがある。この辺りでは、農地を借りて野菜作りを始められた草分け的存在である。そのせいか松本さんの野菜畑は、圃場整備された新しい田んぼの中ではなく、昔ながらの美しい曲線を描く棚田の中にある。面積は250坪ほど。素人が手を出すには、持て余してしまうほどの広さである。そこに毎年10種類前後の野菜と果物を育てておられる。棚田  滋賀県  仰木  棚田米  里山

 

10年ほど前から松本さんの姿をよくお見かけするようになってきた。当時、じっとしていても辛い真夏の太陽の下、ポリタンクに入れた水を両手にぶら下げて、棚田の坂道を何度も何度も往復されていた。その姿には、感心を超えて感動すら覚えたものだった。今も水には気を使われている。基本的には溜められた雨水と自宅から運んできた水を使っておられる。できるだけ農薬などの混ざらない水で野菜を育てたいと考えておられるからだ。

 

写真には、ネギ・ソラマメ・白菜・万願寺唐辛子・エダマメ・イチゴ・下仁田ネギが写っている。しかしその写真の中には、野菜だけでなく、素人から始められた松本さんの汗と努力も写っている。