奥比叡の里より「棚田日詩」 | 実りの秋

2017/10/11

実りの秋

秋は「実りの秋」。と言ってもお米や作物だけが実るわけではない。草木たちは厳しい冬を前にして、次の世代を担う多くの実を付け始める。これも里山の生態系にとっては、大切な「実りの秋」である。棚田のあぜ道や土手の中にも、そして森や山の中にも、よく見なければ気付かない所で新しい命が息づき始めている。

 

今日の写真は、コオロギたちの優しい鳴き声に耳を傾けながら撮ったものである。三枚目の写真の実は、タヌキマメと言うそうだ。先日、棚田でこの実の写真を撮っておられる方から教えてもらった。「こんな身近な所で出逢えるなんて!」と驚いておられた。帰って調べてみると、都道府県によっては絶滅危惧種に指定されているようだ。私はというと、毎年このマメを目にしているはずだ。しかし私の記憶の中からは完全に抜け落ちている。人は、利害のあるもの、関心のあるもの以外は、見ているようで何も見ていないのかも知れない。この写真は、教えていただいて初めて意識した記念に、そして、タヌキを連想させる少しメタボな体形に愛着を感じて写したものである。