奥比叡の里より「棚田日詩」 | 2014 | 10月

2014/10/26

「ホッ」

この辺りは、ほとんどが兼業農家である。働き盛りの人たちの多くは、サラリーマンやお商売をされている。田んぼを守っているのはおじいちゃんとおばあちゃん。それでもサラリーマンのかたわら、田んぼに出て米づくりに励んでおられる方もいる。

 

もう20年程前になる。当時、私と同世代の40才代くらいと思われる方が農作業をされていた。「こんな小さな田んぼ、家族が食べる分しか出来へん」「普段はサラリーマンをしているから、もう止めてもええんやけど・・・・」「それでもここに来て汗を流していると、何でか知らんけど心がホッとするんや」。農作業の手を止め、棚田の向こうの琵琶湖を遠くに見つめながらそんなことを話しておられた。

そんな言葉が思い出される中で、下の写真のシャッターを切っていた。私もここに来るとなぜか心が伸びやかになる。「ホッ」とする。もちろん私は農業に携わっていない。置かれた立場、経てきた経験が異なれば同じ「ホッ」でも中身は異なるのだろう。それでも私の写真は、奥比叡の里の「ホッ」を撮りたかったように思う。

ふと、足元の小さな空き地を見ると、秋の虫の音に包まれながら「エノコロ草」が広がっていた。白い花は、今年最後のヒメジオンだろうか? それとも野菊の仲間のヨメナだろうか?  こんな日本画があったかどうかは知らないが、一幅の日本画を見ているようだった。

2014/10/12

稲刈りが終わって

夏は、蝉の鳴き声が頭の上から落ちてくるように響いている。今はその声もなく、足元の草むらからコオロギなどの鳴き声が優しく聞こえるだけである。既にほとんどの田んぼで稲刈りは終わり、残されているのは酒米と古代米の田んぼだけとなっている。それでも棚田では、来年の米づくりに向けた土手の草刈りや秋耕、田んぼの直焼きの作業が黙々と行われている。



  明日は巨大台風19号がやって来るようだ。いくつかの休耕田で枝豆が育てられている。その葉の黄葉が朝夕の射光線に透かされて美しい。被害がなければいいのだが・・・・・