奥比叡の里より「棚田日詩」 | ふきのとう

2013/02/03

ふきのとう

みぞれ交じりの雪が降る寒い日だった。棚田の片隅に「ふきのとう」を見つけた。毎年この花と出会う度に、「もうすぐ春だよ」といった声が聞こえて来るような気がする。

「ふき」は、どちらかというと水分の多い所を好むようだ。田んぼの横を流れる小さな小川のほとりや、同じ棚田の土手でも多少水気を多く含んだような所に自生している。なるほどこの写真も、棚田の土手からじわじわと水が浸み出すような所であった。この「ふき」を撮ろうと三脚と重いカメラバッグを抱えて細い畦道を進んでいたその時、バランスを崩して畦を踏み外してしまった。普通の田んぼなら何事もないのだが、この田んぼは完全に湿田化(11月4日のDiary参照)していた。左足の膝下あたりまで泥田の中に沈み込んでしまった。足を上げようとしても、泥が重くて持ち上がらない。気合を入れて思いっ切り足を引き上げると、長靴だけが泥の中。という形で左足は無事泥田から抜け出せた。とその瞬間、再びバランスを崩してやっと抜けた左足が泥の中に沈み込んでしまった。結局、靴下もズボンも泥だらけになってこの難局?を抜け出すこととなった。棚田の撮影には、時折こんな不幸?もある。という思い出深い「ふき」の撮影であった。

 

「ふき」は、数少ない日本原産の野菜(山菜)の一つである。古来よりこの辺りでも、冬から春にかけての貴重な食材だったのに違いない。日本料理の世界では、「春には苦味を盛れ」という言葉があるそうだ。その代表格が「ふきのとう」である。出張で信州などに行ったときは、そばと「ふきのとう」の天ぷらをよく注文する。その優しい苦さが、この季節そのものを味わっているような思いにさせてくれるからだ。滋賀県  仰木  棚田  棚田米  里山

(この写真の「ふきのとう」は大きくなりすぎて天ぷらには適さない。残念!)

 

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上の2枚の写真は、同じ日に撮影したものです。下の写真もよく見ていただければ、みぞれ交じりの雪が降っています。いずれも家庭用の安物のスキャナーでフィルムから取り込んでいます。フィルムの平面性を確保するのが難しく、なかなか思ったようなピントが来ません。色も、変な色に偏ったり、例えば雲の濃淡が真っ白に飛んでしまったりと思うようにいきません。また、そうしたことを修正する技術も未熟です。加えて、見ていただくモニター毎に色味も変わってきます。できるだけ、フィルムと同じ状態で見ていただきたいのですが、その点が残念に思っています。ネットで写真を見ていただくことの難しさを、ヒシヒシと感じる今日この頃です。