奥比叡の里より「棚田日詩」 | それぞれの浅春

2013/03/17

それぞれの浅春

三月も半ばを過ぎ、五月初旬を思わせるような暖かな日が多くなっている。既に京都市内では、八重の桜が何本か咲き始め、行き交う人々の目を楽しませていた。しかし奥比叡の桜の蕾はまだ固いようだ。滋賀県 仰木  棚田  棚田米  里山

 

一番上のタイトル写真は、春霞みの山を背景に梅とマンサクの花?が午後の射光線に輝いていた。山里の何とものどかな浅春がそこにあった。

二枚目と六枚目・七枚目の写真は、野焼きの一コマである。この日はご夫婦で作業をされていた。土手の枯草は、かつては牛の飼料などにも利用されていたが、今はほとんどが燃やされてしまう。

三枚目の写真は、満開のオオイヌノフグリの中にタンポポが一輪咲いていた。今オオイヌノフグリは、棚田の隅々で青い宝石のように輝いている。

四枚目の写真は、田んぼの畝の間に産み付けられたカエルの卵。可愛いオタマジャクシが孵化してくるのも、もう少しである。

五枚目の写真は、捨てられたタイヤを挟んで、秋の枯草と春の花の対比、季節のバトンタッチが面白かった。

六枚目と最後の写真は、野焼きの畦の一隅である。冬が燃やされ、春の目覚めを誘う風景である。黒く焼けた枯草、焼け残った雑草の新芽、風に飛ばされてきたクヌギ?の枯葉。この小さな一隅に、冬から春への季節が入り混じっていた。

 

今、奥比叡の棚田では、それぞれの生命(いのち)の上に、それぞれの浅春の時が流れている。